「鹿の王 ユナと約束の旅」は北海道が舞台?|上橋菜穂子さん作品

遊び

この記事を開いていただいたということは、鹿の王が好きな方でしょうか?それともアイヌの民族性に興味がありますか?それとも上橋菜穂子さんのファンの方でしょうか?

記事の著者は、ゴールデンカムイ(野田サトル/集英社)という作品のアニメを一気見してからアイヌの文化に興味を持ち始めましたが、鹿の王もゴールデンカムイも雪が降る地域で世界観が似ているんですよね。

この記事で紹介しているポイント
  • 鹿の王のアイヌらしさをちょっぴり考察
  • アイヌ文化の雑学
  • 上橋菜穂子さんの過去の作品

鹿の王 ユナと約束の旅とは?

上橋菜穂子さん原作の「鹿の王」を劇場アニメ化した作品です。「鹿の王」は2015年に本屋大賞と日本医療小説大賞をダブル受賞し、シリーズの累計は250万部を突破しています。2021年に公開予定でしたが、コロナの感染状況の影響で何度か延期になりました。

© KADOKAWA CORPORATION 2022

上橋菜穂子さんは、この本を書くきっかけになったのは、ウイルスに関する本を読んでいた時だと言っています。「人間って自分の身体ほど分からないものはない」「目に見えない身体の中の微生物の不思議さから生まれた物語です」と述べています。

ちょっぴりあらすじ

この物語は2人の男を中心としてストーリーが展開されていく。一人は、飛鹿(ピュイカ)と呼ばれる鹿を操り、故郷を守るために戦った独角(どっかく)という集団の頭だった、ヴァン。しかし戦いに敗れ、地下のアカファ岩塩鉱で働かされていたのだが、ある晩、謎の獣が岩塩鉱を襲撃、獣は人々を次々と噛んでいった。その後、岩塩鉱で謎の病が流行しヴァンだけが生き残った。ヴァンは地上で侵入した家の竃の中からもう一人の生き残った幼児(女の子)を見つけ、ユナと名づけて一緒に生きることになる。

ウィキペディアより

このあらすじを見るかぎりは、特に北海道らしさはないですね。

鹿の王はジブリ作品なのか

スタジオジブリの作品ではありませんが、「もののけ姫」の作画監督を勤めたことで有名なアニメーター「安藤雅司」さんの作品です。監督に挑戦したのは、鹿の王が初めてで、なんと監督作業と作画監督の両方を兼任したことで苦労したと仰っています。

鹿の王がアイヌ(北海道)だと感じさせるポイント

呼びかけのシーンで「アチャ」と叫んでいる

予告編①にユナが「アチャー!」と叫んでいるシーンがありましたが、ゴールデンカムイでもアシリパが「アチャ!」と呼んでいましたので、ユナの父親が登場するシーンのことなのでしょう。

ゴールデンカムイ

アイヌ語を少しだけ調べてみましたが、家族に関するアイヌ語はこんな風に使われます。

  • クコル アチャ = 私の父さん
  • クコル アチャポ = 私のおじさん
  • クコル ハポ = 私のお母さん
  • クコル ウナルペ =私のおばさん

服装が似ている

©2021「鹿の王」製作委員会

衣装がアイヌの民族服アットゥㇱと似ている点です。このアットゥㇱの原材料は、オヒョウやシナノキなどといった樹木の皮で作られます。樹木の皮はそのままでは固いので、1週間ほど温泉や沼の水に漬けて柔らかくしてから縫い付けるようです。

© KADOKAWA CORPORATION 2022

文庫本の主人公ヴァンの衣装がそれっぽさを感じさせますね。表紙絵では雪が降り積もる様子が描かれていますので、北国が舞台であることは間違いないと言えます。

ただ、アイヌの民族衣装は、刺繍は継ぎ布などによって、「渦巻き文」や「括弧文」と呼ばれる文様を施すようなので、その文様がないことを考慮すると、アイヌ民族を描いているわけではないのかもしれません。

ゴールデンカムイ

ゴールデンカムイでは、「括弧文」と呼ばれる文様の衣装は多く登場しますね。

絵師さんの出身地が北海道

角川つばさ文庫から出版されている文庫本の絵師(イラストレーター)、HACCANさんという方が北海道出身でした。単なる偶然かもしれませんが、きっと原作者の上橋菜穂子さんも、北海道のイメージを大切に表現してくれるイラストレーターさんに任せたかったのではと感じます。

アイヌ文化の雑学

アイヌ語が語源である言葉は多いです。たとえば「昆布」「鮭」などですが、次の言葉もアイヌ語から来ていると言われています

シシャモ飢えに苦しむ人々にフクロウの女神が、柳の葉に命を与えてシシャモにして人々に分け与えたと言われています。キレイな伝承ですね。
トナカイ北海道にトナカイはいませんでしたが、アイヌ語の「トゥナカイ」から来ていると言われています。アイヌ民族は北海道以外の大陸との交流があったと考えらます。実際にトナカイの角で出来た装飾品が北海道の遺跡から見つかっているんです。
ラッコアイヌ語の「rakko」の発音から来ています。
コロポックルコロポックルの「クル」が人を意味し、伝説の小人というアイヌ語になっています。じゃがぽっくるの名前はコロポックルから来ているそうですよ。
カムイゴールデンカムイの「カムイ」でおなじみです。神を意味しています。
北海道立北方民族博物館ではより詳しい情報が残されています

ゴールデンカムイの面白さはアイヌ文化が良く見えるところ

鹿の王から話は脱線していますが、ゴールデンカムイでは鹿や熊、うさぎといった動物を猟で取り、命への感謝をしながら食事をする様子が多く描かれています。

個人的にはそういったシーンが強くイメージに残っています。熊の脳みその味レポをしていたり、鶏肉を骨ごと食べるための調理法であったり、ラッコの肉を食べたり。身近にない食文化を知ると、今ある当たり前の食生活に感謝したくなります。

今はラッコは絶滅危惧種なので、食べることは困難でしょう。日本国内でも2021年度時点で水族館に4頭しか残っていないようです。ピーク時の1994年は122頭もいたことを考えると、繁殖や育成が難しいのでしょうね。

調べたところ、ラッコ肉は臭くて美味しくないそうな…。

「鹿の王」作品情報【スタッフ・キャスト】

【スタッフ・キャスト

  • 【声の出演】堤真一 竹内涼真 杏
  • 【原作】上橋菜穂子『鹿の王』(角川文庫・角川つばさ文庫/KADOKAWA刊)
  • 【監督】安藤雅司 宮地昌幸

ジブリ作品は、俳優を声優として起用することが多いですが、今回は堤真一さん、竹内涼真さん、杏さんが出演されるので、めちゃくちゃ豪華なキャストですね。堤真一といえば「やまとなでしこ」が相当懐かしいですが、昔の良きドラマって再放送されないんでしょうかねー。

原作者「上橋菜穂子さん」の過去の作品

獣の奏者エリンの画像
©上橋菜穂子・講談社 / NHK・NEP

原作者「上橋菜穂子さん」は他にも素晴らしい作品を残していらっしゃいますが、「鹿の王」が好きな方にはNHKで放送された「獣の奏者エリン」の原作もオススメします。

NHKで放送されるアニメは本当に品質が高く、子どもにも見てもらいたいと思える作品が多いですが、エリンについても同様です。Kindle版の電子書籍ではとても安く購入できますので、これを機に試して読んでみてはいかがでしょうか。

さいごに

「鹿の王 ユナと約束の旅」は北海道が舞台かどうかについて、私なりに登場人物の名前で語源を辿ったりと調べてみたのですが、ハッキリしたことは調べきれませんでした。原作者も特に舞台について述べてはおりませんが、「鹿の王」の文庫版はKindleUltimate会員であれば無料で読めるので、気になった方は30日間お試し期間中に読んでみてはいかがでしょうか?

タイトルとURLをコピーしました